ゆらゆら、ぬるぬるしているかと思えば、フライヤーでは鋭くこちらを見つめる。川合凜は、舞台の上でも写真の中でも独特の存在感を放つ。最終通しを翌日に控えた3月19日、『バカンス』への意気込みと併せて、川合凜の正体を、川合凜本人に聞いてみた。

（取材日：2023年3月19日）
（撮影＝石塚智恵様）
（取材・文＝菅原茉利奈）

未熟さを愛嬌として、自覚的に捉えてやっている

――自己紹介をお願いします。

川合凜です。早稲田大学演劇研究会[1]に大学1年生で入会して、退会後はフリーで活動しています。元気に楽しく頑張ります。好きな劇団―、中野坂上デーモンズとか･･･大きな声を出す作品や会話劇が好きです。

――高校時代は吹奏楽部だったそうですが、大学から演劇をやろうと思ったきっかけは何ですか？

高校生の時から観劇が好きで。初めて見たのがYouTubeに上がっていた「柿喰う客」公式の映像で、そこから色々見始めて。王子とかによく行って、「悪い芝居」とかも好きでした。

――高校生の頃から！

「小劇場に行ってる自分かっこいいんじゃないか」っていうのもありました･･･（笑）。大学に入って舞台始めようと思って。劇研にインカレで入会しました。

昨年春の劇研の公演に出演したときに、私の“かわいい”はどこから来ているのか”みたいな話をして。私がのんびり生きてきたので、人よりちょっと未熟というか･･･技術的に劣る部分もあって。だから正攻法じゃなくて「他の人と別コースでなら勝てるかも！」という生き方をしてきた。未熟さを愛嬌として、自覚的に捉えてやっているっていうところを強みにしたい感じです。

分からないこともお互いに喋って解決していく

――明日が最終通しで。『バカンス』はどんな作品に仕上がっていますか？

解釈―稽古の序盤に「私たちはこういう解釈でやっているよ/こういう答えを出したよ」というのが提示できたらいいねという話があって。その答えがやっと少しずつ出せるようになってきた気がしています。

あとは、安定感があると思います。瀧口は分からないことも悩んでいることもちゃんと口に出して言ってくれる―瀧口の運営能力も感じています。分からないこともお互いに喋って解決していく。

――純粋に会話の量が多いって、まず大事なことだよね。

すごいなと思います。演出する側からしたら、一方向で指示してしまうが楽なはずで。でも瀧口は意見をちゃんと聞いて、その上で自分の考えを提示できる。瀧口の柔軟性や力量を感じます。どうしたら稽古が上手くいくか、ちゃんと考えて、実現しようとしている。

瀧口が「言いたいことがあったら言ってね」と聞いてくれるんですけど、最近はそう言われなくても、疑問や意見を言いやすい稽古場になっていると思います。

――一方通行の稽古にしないと思ってはいても、実現するのは本当に難しいと思うから･･･羨ましい稽古場です。

あとは･･･同期と演劇できて幸せだなと･･･！座組にもスタッフにも同期がたくさんいて、こんなに集まれるんだなという明るい気持ち･･･「頑張っていこう」というパワーをもらえる布陣になっていると思うんです。凄く嬉しい･･･凄くうれしい！

そういった不安も話しながら進められるんじゃないかと思って。

――今回の出演オファーを受けた決め手は何でしたか？

オファーをもらったときは、同期と演劇ができること、自分が気になっていたテーマと向き合えること、純粋に瀧口が信頼できそうだから、という感じでした。公演を盛り上げたいという瀧口の気概を感じたし、私も盛り上げたいと思った。

――瀧口さんの気概を感じたという点は私も同じくです。

また、自分が気になっていたテーマと、この公演でなら向き合えそうだというのも理由の一つでした。テーマのセンシティブな部分については、オファーをいただいたときに凄く不安で。今まで、気になっていても分からないから触れたくない、逃げたくなってしまう気持ちが結構あった。勉強もそんなにしていなくて･･･怖いという気持ちもありました。

けど、瀧口ならそういった不安も話しながら進められるんじゃないかと思って。

―でもやっぱり･･･同期と演劇したかった！あとストーリー、二人で逃げて高知に行く話が好きだった！逃避行したくて、めちゃくちゃ憧れていて。逃避行って実際に逃避しきれない悲しさがある･･･それがすごく素敵だなあと。

色々考えていきたいし、批判も待っています

――役者の立場からは、「所信表明」をどう捉えていますか？

「瀧口だけが考えているんじゃだめだ」と思って。志のある人に着いていく、ではなく、一人一人細かい考えの違いはあれど、瀧口と同じくらい強い意志をもつ―そういう人が集まった座組になればいいなと思います。

同時に、ビジョンがある公演だからこそ、作品本編を面白くしたいなと。こういう過程で創って、こういう作品ができました、というのをお見せできればと思います。

――ありがとうございます。では、最後に宣伝の一言をお願いします！

掲げる目標は沢山あって。だけど身構えないで観に来られる作品だいます。恋バナを観に来るつもりで楽しんでもらえたらと！ハード面でも、この作品をきっかけに演劇関係者はみんなで色々考えていきたいし、批判も待っています。おすすめです！

[1] 「早稲田大学演劇研究会」･･･早稲田大学公認演劇サークルのひとつ。略称は「早大劇研」。劇団木霊、舞台美術研究会と並んで、大隈講堂裏に専用アトリエを構える。

■早稲田大学演劇倶楽部企画公演『バカンス』
2023.3.25-27 於早稲田小劇場どらま館
・公演詳細はこちら
・チケットはこちら

■川合凜　プロフィール
Twitter : @kawai_rinrin_
Mail : rinrinnomail.rinrin@gmail.com
かわい・りん
2000年6月9日生まれ。大学入学と同時に早稲田大学演劇研究会で演劇をはじめる。現在はフリーの役者として活動中。2023年3月に明治大学文学部を卒業予定。
切長の目つきと豊かであどけない表情が特徴的。自己肯定感が高い。蛇のようにぬるりとした存在感と、ふわふわとした愛嬌で観客を魅了する。
主な過去出演作品に、
sleepwalk『メゾンムサシノ』
早大劇研『轟音トラッシュ』
キ上の空論『ピーチの果て、ビーチのアビス、つまりはノーサイド』
ひとり芝居『白夜の帳』　など。

【インタビュー】川合凜に聞く川合凜、そして『バカンス』への意気込み「恋バナを観に来るつもりで楽しんでもらえたらと！」