稽古場では「のびのび過ごせていると感じています」と答えたときちとせは、他の誰よりもゆっくり、慎重に言葉を選ぶ様子が印象的だった。

年代の異なる、初共演の出演者も多い中、彼女は稽古場でどのように過ごしているのだろうか。稽古開始から約半月が経った3月1日のインタビューを公開する。

（取材日：2023年3月1日）
（取材・文＝菅原茉利奈）

ときちとせです。劇研[1]の2年代です。中学の時に演劇を始めて、高校では演劇部が無かったのでしばらく空いて。大学3年生で本格的に劇研に入って、また色々やりはじめたところです。

――高校では演劇以外の部活を？

映画研究部と新聞委員会に入っていて。演劇っぽいことやりたいなぁと思って映画研究会に入ったら、演技としては全然違くて(笑)。

――映画研究部！撮る方の研究会ですか？

そうです。映像と舞台だとまた違うんだなと･･･改めて演劇をやりたいなと思って、大学で再開しました。

――なるほど！瀧口さんとは今回が初対面ですか？

そうです。

――今回、出演を決めたきっかけは何でしたか？

オファーをいただいて、劇研外の人ともつながりが出来たらいいなというのと、作品テーマに興味があったことです。ジェンダーとか家族とか、シスターフッドなど、元々関心のあったテーマだったので。

――勉強会やヒアリングの実施など、より良い稽古場の環境づくりに力を入れています。稽古に参加してみて、今の所感を聞かせてください。

事前のヒアリングでは「やりたくないことはありませんか？」というのを主宰補佐の方から聞いてもらえたし、稽古中も瀧口さんが「分からないことある？」「気になるところある？」と、毎回聞いてくれます。

だから、後からやりたくないことが出てきても、それを伝えやすい稽古場だと思います。

――後からでも伝えやすい･･･ヒアリングで伝えることが全てではないから、とても大事なことですね。

何を言っても許されるというと少し違うけど･･･やりたくないことは伝えて大丈夫、安心していられる空間だと感じています。稽古の作り方も、主宰の雰囲気も。まだ全員とは馴染みきれていない感じがするのですが、のびのび過ごせる稽古場だと感じます。

――稽古場で伸び伸び過ごせる･･･めちゃ良いことですね

私自身、演技に苦手意識があったので、今回の稽古場の雰囲気には助けられています。

母親を演じるのですが、年齢が(自分自身よりも)だいぶ上だったり、娘がいたり、そういう雰囲気とか・・・娘役の樺香にも「愛されてる感じがしない」って言われたり(笑)

――不思議と年相応の役が多くなりがちで、母親世代以上の役って演じる機会が少ないですよね。

でもまだ稽古場で自分自身に遠慮がある感じもしていて。壁を壊せたらいいなと。

この前アイスブレイクでバトミントンをやりました！楽しかったです！11時に戸山公演に集まって、ピクニックもして。そのあとドッジボールもしました(笑)[2]。

――ちとせさん個人としては『バカンス』をどんな人に観てもらいたいですか？

どんな人…っていうと難しいんですが…あ、『テルマ＆ルイーズ』って映画知ってますか？

――知らないかも・・・

シスターフッドもので有名な映画で、主人公の女性二人がドライブ旅行に出かけて、その途中で性被害に遭いかけて、相手を銃殺しちゃって二人で逃走する、っていうロードムービーで…。別物ではあるんですけど、『バカンス』と近いなと思ってて。

――おぉ....! たしかにストーリーが似ていますね。

だから、もし知ってる人がいて、こういう映画好みの人がいたらオススメかなぁと。

でも、誰に観てもらいたいかっていうと、大学生とか同年代の人ですかね。家族のこととかジェンダーのこととか、割と身近、私たちの周りにあるテーマを扱っていて、しんどいなぁって感じるポイントもあって。難解な演出があるというわけでもないので、友達の話を覗くような気持ちで観られる作品かなと思います。

――演出的にも見やすいと、他の方もおっしゃっていますね。

友達から「演劇観たことあるけどよく分かんない」って言われることが時々あるのですが、『バカンス』はそういうこと少ないんじゃないかなと。間や台詞の繋げ方や、物や場の使い方などで演劇っぽい演出も採り入れられていて、物語の入り口として観やすい作品になっているんじゃないかなと思います。

[1] 劇研･･･公認演劇サークル「早稲田大学演劇研究会」の略称。“げきけん”と読む。舞台美術研究会・劇団木霊と並んで、大隈講堂裏に専用アトリエを構える。

[2] 主宰・瀧口が撮影したバトミントンの様子は「キャスト／スタッフ」にてご覧いただけます。

■早稲田大学演劇倶楽部企画公演『バカンス』
2023.3.25-27 於早稲田小劇場どらま館
・公演詳細はこちら
・チケットはこちら

■ときちとせ　プロフィール
2000年10月3日生まれ
2021年に早稲田大学演劇研究会に入会。主に、制作や音響操作、照明として活動。
過去の出演作品に、早大劇研企画公演『否』など。
Twitter : @poroporopo_roro

【インタビュー】ときちとせ に聞く、『バカンス』稽古場の実際「のびのび過ごせる稽古場だと感じます」

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