多分、コミュニティのレベルで目指していくべき―目指していきたい理想が詰まっていると思っていて。簡単には達成できないから「所信表明」という形になっているんだと思うし、全部を実現することをノルマにしているわけではないと私は理解してる。でも、それを口にすることがナイス、と思って。

――たしかに。

自分たちが学生として演劇をやってきて、サークルだからっていうのもあるけど、収益を何も考えていなかったから。そもそも学生会館では収益を取ることができないし、そうじゃなくても「小劇場は赤字だよね」という暗黙の了解みたいなのがあったから。それで、「儲からないっしょ」みたいなのが当たり前になってしまっていたけど、そうじゃないよなと。

――それな！！サークルを出たとて黒字の未来が見えないっていう…私自身も小劇場での収益の課題をずっと考えていて。あえて聞くのだけど、逆になぜ創り手は黒字を目指したいんだと思う？

一旦収益の話から離れるけど、舞台俳優を名乗ることって難しい―「舞台俳優です」と名乗ることは誰にでもできて。極端に言っちゃえば、例えば職務質問された時に、「舞台俳優」と書けるか、「バイトで生計を立てているフリーター」と書くのか、っていう。

小劇場って、個々人の演劇愛にすごく支えられている業界だと思うから。舞台俳優としてのみでは生計を立てられない、それでもやりたいって思う人の気持ちでギリギリ成り立っている現状だと思うんだけど。
やっぱりそうとはいえ、胸を張って「舞台俳優です」って言いたい。そのために“生計を立てられるか”っていうのはめちゃめちゃでかい。

テーマは重いけど、表現方法としては取っ掛かりやすいと思っていて。

――この公演に俳優として参加する中で、「所信表明」からはどんな影響を受けていますか？

まず内容にセンシティブな部分があるから、それを無理なく創って無理なく届けるというのはまず一つ目標であり、自分が一番関われる点であるとも思う。だから、例えば宣伝するときにそのことをどんな言い方で伝えるかは結構気にしていて。

黒字化というところはもう、集客だね･･･己の宣伝力が試される(笑)

――集客だね…広報部としては、今回は演劇が初めてのお客様への宣伝に力を入れていて。

初めての人にとって分かりにくいような…例えば身体表現とか叫び声とか、演劇的な分かりづらい表現はそんなに多くない作品で。テーマは重いけど、表現方法としては取っ掛かりやすいと思っていて。そういうところで、するっと物語の中に入ってもらえるようにできたらいいなと思ってます。

――初心者の人も観やすい作品ですか？

と、思っている。

実績として残せたら、「できた！」って言えるから。

――今回の公演は、アフタートークをはじめ作品周辺での取り組みにも力を入れています。元木さんは『バカンス』がどんな“場所”になってほしいと思いますか？

さくらちゃんの目指す物がひとつでも多く達成できたらいいな、それが手伝えればいいなあという気持ち。

――うんうん

あとは、「所信表明」に書いたことが達成されるのは結構“希望”のように感じていて。
例えばセンシティブなシーンに臨んだけど、座組の人がみんな健康に終われたね、とか。
若干であっても黒字にできたね、とか。実績として残せたら、「できた！」って言えるから。

――「できた！」の体験、積みたいよね。

本当にそう。こうすればできなくもないぞ、というのを自分が今後も演劇をやっていくなら参考にしたいし、やっていかなかったとしても今やっている人たちに言いふらしていきたいな。

――そうだね。本当にそう思う。成功も失敗も、ちゃんと経験したいな。

――では最後に、『バカンス』宣伝のひとことをお願いします。

家族なり、恋愛、勉強･･･何かしら共感できるしんどいポイントがきっと観た人誰にでもあると思うし、そういうしんどみが積み重なって大きな劇的な事件が起きてしまう物語です。
するっとしんどみを感じて、うわわっと大きくなるものを感じてもらえるんじゃないかと思う。それを劇場で、生で見るから感じるものと、同時に演出的なとっつきやすさっていうのがちゃんと融合できる作品になると思うので。おすすめです。

[1] 劇団てあとろ50’･･･早稲田大学公認演劇サークルのひとつ。1974年（昭和49年）に創設。読み方は「げきだんてあとろフィフティ」。通称“てあとろ”

■早稲田大学演劇倶楽部企画公演『バカンス』

2023.3.25-27 於早稲田小劇場どらま館

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■元木真珠　プロフィール
もときしず
1999年4月11日生まれ。早稲田大学の演劇サークル「劇団てあとろ50’」出身。在籍時は役者の他、舞台監督、振付としても活動する。この春に就職し、演劇と仕事の両立を目指して活動予定。
主な過去出演作に、
SWANDIVE×劇団てあとろ50’『ツンドラ』
劇団てあとろ50’×ワヲン旗揚げ公演『いつか見た星』
劇団まぼろしのくに『離レ姫』　など。
・Twitter : @pearl_shizu
・Instagram : @pearl_shizu

【インタビュー】元木真珠が見据える『バカンス』への「希望」