①哲学対話練習「かわいいって何？」

二チームに分かれて、とっつきやすいテーマをまずはやってみる。

②哲学対話「家族って何？」

Q,家族って何だと思う？

リス　　　信頼できる人。

ウサギ　　呪縛。友達は選べるけど、家族は選べない。夫婦は選べるし、親は望んで子供を産むけど、子供は生まれることに対して選択権がない。（子供に）義務感を持たせすぎている。家族に対して良い印象はない。でも、家族であることで理由なく愛を与えやすい。難しい。

モモンガ　良いところも悪いところも見つけられるけど、大きく言うと尊敬できる人。

白鳥　　　無条件の繋がり。個人的には、甘えられる人。機嫌が悪いときは放っておいてと言えるし、機嫌が良ければ聞いて！とすぐに言える。向こうが無条件で愛情をくれることを知っている。嫌いにならないという信頼がある。だから甘えられる。ただ、この関係は一般的ではないと思っている。

パンダ　　いろいろな形があるなぁ。

カワセミ　先日、（チェーホフの）『三人姉妹』を観てきた。家族の絆の崩壊・再生を視覚的に浴びて不思議な気持ちになった。

ライオン　ペットは大切だけど、家族の一員という感じはしない。

Q,ペットは家族の一員だと思う？

ウサギ　　違うと思うけど、家族がそう言っているからそうなんだなぁと思う。

モモンガ　ペットは家族。時間を一緒に共有している人は家族だと感じる。

ライオン　ペットと同じ釜の飯は食べてないね。

白鳥とリスがカメを飼っているとわかる。

カワセミ　ペットとご飯の時間は一緒？

→カメは時期と日によって違う。冬眠するとご飯はあげない。

ウサギ　　猫は、食べていると「なんでくれないの？」と訴えてくる。

ライオン　（カメを飼っている2人に対して）え、カメのことは好き？

白鳥　　　好き嫌いの対象として考えたことがなかった。うちはカメに名前をつけていない。「カメ〜」って呼ぶ。かわいいとは思うけど、どこが何が好きかと言われるとわからない。

リス　　　カメに信頼のようなものがある。悩みを話したりはする。

ライオン　信頼できなくなったら家族じゃない？

リス　　　自分の定義では、自分が家族と思ったら家族。

ライオン　「家族」は1人1個みたいな感じがするけど、何個もあって良いんじゃないか。例えば、何らかの共同体とか。自立するとは、依存先を増やすことだと聞いた。つまり、家族に対する比重が重すぎると自立できていない状態。だから何個もあって良いのではないか？「そこにあるもの」という要素が強いと思う。

白鳥　　　例えばゼミの人ととても仲良くなって家族のように思っていたとしても、向こうもそう思っているとは限らないよね。どこかに家族を作ろうとしたときに、そういう状況に直面するのが怖い。だから一生「家族だよね」って口に出せないと思う。

ライオン　相互的にそう思えていないと家族ではない？

白鳥　　　信頼のバロメーターみたいな感じ。

白鳥　　　尊敬できる＝家族という感じはしない。尊敬できなくても軽蔑していることにはならないし、家族だと思う。同居は大きな要素かも。

ウサギ　　「家族だと思っているから甘えちゃう」というDV彼氏のセリフを聞いた。他者との境界線が曖昧なのが家族なのかも。同居して生活を共にしていると尚更（曖昧になる）。

金魚　　　以前身内のことを貶されたとき、自分のことではないのにムカついた。確かに境界線が曖昧かも。

リス　　　「家」の「一族」が貶される、という考え方ができそう。

ライオン　「身内」という言葉は家族に対してでなくても使うし、身内が貶されたらムカつく。身内判定って人によって違うよね。

リス　　　国規模でも（例えばヨーロッパで会う日本人のように）「身内」の感覚はある。どんどん感覚を狭めていった先に家族があるのかも。

ライオン　その人にとって1番近い「身内」が家族なのかもね。

白鳥　　　サークルも身内カウントしている。仲良い1人の友達は身内という感じはしない。個人対個人だから？意外と身内判定は時間に拠らないのかも。

ウサギ　　サークルの人に対しては責任感がある。サークル員が他所でなにかをすると申し訳なく思ったりする。責任感の積み重ねが身内になるのかも。座組も、本番が近くなるにつれて身内になる。

モモンガ　サークルの後輩には責任感を感じるけど、同期以上には感じない。

ライオン　誰に対してそう思うのかは人によるのかも。

ウサギ　　先輩だったらそう（責任感を感じるように）思わないかもな。

白鳥　　　先輩がそれぞれ働いてる仕事場で何をしていても知らないけど、演劇の場で何かをやらかすと責任感を感じる。「うちのがすみません」みたいな。

ウサギ　　こちらにも迷惑かかるからかも？

白鳥　　　無関係でも、何か他人事に思えない。

ライオン　家族は他者だから分かり合えないと思っている。自分は、家族に気を遣うタイプ。（急に）「今日ご飯いらない」ということは無いようにしている。申し訳ないから。（家族に対して）他者の感覚と身内の感覚が両方ある。

白鳥　　　ご飯の話、自分も同じ。母がとても家事をする人で、そのありがたさを高校生の頃に自覚した。でもそれまで当たり前だと思っていたから、無意識に（母が家事をしてくれるのが当たり前だと）思っているのかもしれない。幼少期に常識を形成されてしまった。

ライオン　よく私に何十年という時間を割いたなと思う。

ウサギ　　暴力的な思想だけど、「あなたが産んだんだから当然じゃん」という気持ちもある……

→「親ガチャ」という言葉があるね。自己責任論に近い。

ウサギ　　親から与えられるもので1番大きいものは価値観だと思う。特に小さい頃は、親の価値観＝自分の価値観。大人になるにつれて（価値観が変容して）どんどん他者になっていく。

ライオン　安全や倫理の観点での物事の良し悪しは言われたけど、（自分は親から）趣味趣向について何も言われなかった。習い事や進路について口出しされなかった。習い事も、最終的に自分でやると決めた。ありがたかった。

金魚　　　TVやゲームなど、親に厳しく制限されて育った。

リス　　　与えられないことも含めて、価値観を与えるということなんだと思う。

白鳥　　　自分は特に制限されなかったけど、親の気持ちを考えて進路などを判断することがある。兄弟が進んだ道などから、親の価値観を過剰に読み取っていた時期がある。

モモンガ　進路について。金銭の問題はかなり影響すると思う。不自由ない環境で育ててくれたことへの感謝が大きい。

ライオン　気がついたときには自分にお金が掛けられていて、借りがあるという気持ちになる。返さなきゃと思う。借金の意識が、公立に行った方が良いかな、みたいな考え方に作用する。

モモンガ　金銭感覚も親に影響される。就職した数年後が怖い（金銭感覚が変わらないまま経済状況が変わるため）。

白鳥　　　自分は、金銭を借りているという意識はない。ただかけてもらっているな、と思う。愚痴を言うと共感してくれたりして、無意識下で家族を他者だと思えていないのかも。返さなきゃいけない相手だと思えていないのがよくないところ……まだ享受する側だと思っている。しんどいときに最終的に頼るのが母。

③家族、シスターフッドについて知識をつけてみる

〇家族について

・定位家族と生殖家族

・家族とは状況依存的→常に潜在しているが、顕在化する機会がない

・「切っても切れない」絆と憎しみは表裏一体

・昔のほうが血縁かどうかは意識されていなかった（まずわからないし、イエ制度の方が重視されていた）。愛によって強固に結びついている、みたいな形はそんなに古くからはないし、普遍的でもない。

・そもそも「子供」という区分は18世紀に浸透した。それまでは小さい大人。

・家族に対し、様々な考えを持っている人がいて、誰も他人の痛みは解れないし、当事者にはなれない。

〇シスターフッドについて

シスターフッドとは？

→「単なる友情ではなく、男社会の抑圧、女たちの生きづらさに気づいて強く結ばれた女同士の連帯」やわらかいフェミニズムP166 より引用

→女性、家族を連想させる「姉妹の連帯」ではなく、社会を変えようという「信念を共有する連帯」

1960年代〜1980年代、アメリカのウーマンリブの時代に出てきた言葉。ざっくり言ってしまえば、ウーマンリブとは女性を解放しましょう、という時代。

SNSなどが無い時代に、女性たちが集まってポスター張りやデモなどを一緒にやるようになったのが始まり。

最近のシスターフッドの捉え方として多いのは、女性同士の愛とも友情とも言い切れない独特の関係の総称、というもの。

シスターフッドは女性と男性の二元論の上に成り立っている（男性社会に対する反発）。第1回勉強会で扱った、セクシャリティのグラデーションの話と矛盾を感じるかもしれないけど、どちらも「より良い社会の実現」という最終到達目標は同じ。

作品の区分としての単語

「ブロマンス」…ブラザー＋ロマンス。ボーイズラブでもないけど友情でもない関係を取り扱った物語・作品

「ロマンシス」…ロマンス＋シスターフッド／シスター。

『バカンス』におけるシスターフッドは、正確に言えば少し違う。

もちろん生きづらさに抗うという要素もあるけど、一方向の恋愛もある。

もしシスターフッドという言葉を真が知っていたら、真はシスターフッドだと思うかも。

つばさは性別二元論などを全てフワッと超越したところにいる。

④感想

ウサギ　　（第1回勉強会で扱った）ジェンダーより楽しく話せた。対話に慣れてきたのもある。みんな、育ってきた環境によって価値観が違っていて驚いた。

金魚　　　家族の関係のような構造をいろんなところ（先輩と後輩など）に見出せるのがおもしろかった。

モモンガ　自分自身も新たな気づきがあった。演劇作る上で根っこの部分をみんなで考えるということができる座組が最近少ないと思うから、この会は素敵。

白鳥　　　自分は、家族に対して元々否定的な気持ちは持っていなかった。家族に対して否定的な考えを持っている人の話をもっと聞いてみたい。シスターフッドは、話を聞いてイメージはできた。脚本を読んで、向き合い方がわからないなと思っていたけど、ひとまず前向きで良いなと思った。人と話して生まれるもので間違いがないことがわかってよかった。

カワセミ　家族の話をしたけど、「身内」とかから繋がって新人訓練の話もした。自分にその考え方はあるかないか、照らし合わせながら聞いてほぉ〜と思った。

リス　　　「家族」について話しているはずなのに違う話をしているように感じつつも、関連することだった。すごく包括的だと思った。いろんな家族の形があって凄い。

参考

■書籍

・『やわらかいフェミニズム − シスターフッドは今』　河野貴代美編著

https://31shobo.com/2022/08/22004/

・『血のつながりと家族のかたち　－　わたしたちが血縁を意識するとき』　久保原大

http://www.koyoshobo.co.jp/book/b592551.html