――それで演劇現場の構造改革のための公演を打とうとなった。

演劇の問題と解決策を頭の中では考えたけど、考えただけじゃしょうがない、やらなきゃ、形にしなければと思って。自分が世界を変えられるってわけじゃないけど、何かやってみないと気が済まないタチなので。そのときにコロナ前に書いた脚本の存在を思い出した。
だから初期衝動としては二回あるってことかな。コロナ前に書いた脚本と、演劇の構造改革をしてみたいっていうことと。

私は役者をやりたいのに出なかったら意味ないじゃんって思って。全然オファーとかないので、自分でやるしかないかという気持ちです。

――今回の役者陣は年次も経験した公演も様々な人が集まっていますが、この8人は何を基準にキャスティングしたのですか？

スタッフにも言えることなのですが、これまでの3年間、コロナの影響もあって私は早稲田外で活動していることが多くて、早稲田にどんな人がいるのか知らない状態だったんです。なので、2022年度は早稲田の色んな公演を観に行って、良い役者さんやスタッフさんを探して。その中から声をかけていったって感じです。だから、てあとろ[3]の同期とちゃんと喋ったのも今年が初めて。

――ちなみに、瀧口さんが目で追ってしまうような役者ってどんな人ですか？
ずっと感情が動いている人、形だけになっていない人かなあ。

――自分自身も出演しようと思ったのはなぜですか？

そもそも私は役者をやりたいのに出なかったら意味ないじゃんって思って…。全然オファーとかないので、自分でやるしかないかという気持ちです。

――まだ稽古も始まったばかりですが、演出について聞きたいです。今回瀧口さんが初めて演出をするに当たって、先行イメージとして頭の中にある作品などはありますか？

“イキウメ[4]”さんですね(笑)。(イキウメが)『天の敵』っていう作品を去年やってたんですけど、演出してて「これ『天の敵』じゃん」って(笑)。内容は全然違うけど、場面の形はイキウメに強く影響されてますね。

――今回は劇中音楽もオリジナルということで。どらま館や学生会館の作品では、既存の楽曲を使うことも多いと思いますが、、？

はい。音響さんとは別で、オリジナル曲を二曲依頼しています。開演前後の客席BGMと、劇中のもう一曲です。既存の曲を使っていると、作品のイメージがそれによってすごく固められてしまうと思っていて。あとは、音楽担当の人は高校の同級生なんですけど。一緒に何かつくってみたい気持ちがずっとあって。

この前打ち合わせをいたばっかりなんですけど、もう一曲デモが上がってきてて！

――早い～！楽しみ！

手探りのところにとりあえず「私はここにいます！」って叫んだら、見つけて声をかけてくれる人が意外といることに気づいて。

――情報公開から一ヶ月経ち、同時に公演初日まで残り約一ヶ月でもある今、手応えはどうですか？

実際にやらないと分からないことがあるだろうな、というのは元々分かっていたけど。今の時点でもう失敗も成功もしていて、既にやってよかったと思うことができている。

闇の中―手探りのところにとりあえず「私はここにいます！」って叫んだら、見つけて声をかけてくれる人が意外といることに気づいて。

――分かる～！クラウドファンディングも高知弁監修者の募集も、協賛企業の募集も..。今回は初めてのことが多くて常に手探りだけど。

暗闇の中でピカーって自分が光っていれば、見つけてくれる人が案外いる！(笑)

――ちゃんと見てくれる人がいるんだなってね。

――『バカンス』はどんな人に観てもらいたいですか？

――作品本編＝ソフト面と、作品の外側＝ハード面的[5]なことの両面から聞きたいです。

ソフトの瀧口的には、大学生に観てほしい。内容が学生の話だし、主人公と同じような悩みに共感する人も多いんじゃないかって。それで、観た後で人と喋ってほしい。演劇を観た後に誰かと喋りたくなるあの気持ちが、初めて演劇を観る人にも、頻繁に観劇する人にも起きたらいいなと思う。

――ハード面的には？
「所信表明」を出したのもあって、演劇関係者に観てほしい。何かしらの方法で今後も演劇を続けたいと思っている人が座組に多い公演だから、そういう私たちのチャンス・きっかけになればいいなって。
あと、ハード面的にも演劇が初めての人に沢山きてほしい。「ふたりでバカンスチケット」って、演劇を観るのが初めての人と一緒に来ると使える割引も用意したし、使ってほしいな！「#春から早稲田」の人も含めて沢山来てほしい。

――お客様を増やすには、普通に街中を歩いてる人を演劇ファンにしていかなきゃだからね！では、最後に皆さんへ一言お願いします。

22年度の締めくくりは『バカンス』へ出かけてください！！

[1] ドラマトゥルク･･･漫画家につく編集のような存在。いろいろアドバイスとかお手伝いをするが決定権は作家にある。演出助手が演出の手足だとしたら、ドラマトゥルギーは脳みそのようなもの（瀧口談）。
[2] エンクラ･･･早稲田大学演劇倶楽部の略称

[3] てあとろ･･･エンクラと同じく早稲田大学公認サークルである“劇団てあとろ50’ ”の略称。

[4] イキウメ･･･2003年旗揚げの劇団。前川知大氏が主宰。
[5] 「ソフト面/ハード面」という呼び方は、用語とまでは言えないが近年の企画書でよく見かける単語である。菅原が思うに、一般に「ソフト面」は脚本演出・役者・音響・照明・美術・衣装などが織りなす作品本編のこと、「ハード面」は制作・広報などが担う公演の対外的な側面や、創作現場での運営的な一面を指すことが多いだろう。

■早稲田大学演劇倶楽部企画公演『バカンス』
2023.3.25-27 於早稲田小劇場どらま館
・公演詳細はこちら
・チケットはこちら

■瀧口さくら　プロフィール
たきぐち・さくら
2000年4月7日生まれ。
立教大学現代心理学部映像身体学科所属。主な仕事は役者。
小1から高2までクラシックバレエを習っており、振付も務める。その他、劇評、写真、制作、ドラマトゥルギーなど。
・Twitter : https://twitter.com/motsupan
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【インタビュー】瀧口さくらが語る、『バカンス』での挑戦と覚悟「自分が世界を変えられるってわけじゃないけど、何かやってみないと気が済まないタチなので」